* おもいで(その13)

今から何千年か前のことであると思いますが、正確な年代は分かりません。この話は前々回、前回からの続きで3話目です。(志摩川)

輪宝・羯磨 Art by T.Shimagawa
輪宝・羯磨 Art by T.Shimagawa

 私は家に帰ってから暗い気持ちで毎日を過ごしていた。心の中で作りあげてきた自分の理想の世界と冷たい現実の世界との間に越えることのできない溝が現に存在し、それが大きな障壁となって私の前に立ちはだかっていた。私は自分の力の限界を嫌というほど感じていた。


『私はいったい何のために生まれてきたの?』『私がいくら頑張ったって、何も変ってはいないじゃない』『私はただ自分のやりたいほうだいのことをして父を困らせてきただけの我が儘な娘としか見られていないじゃないの』『それに私に気を使って優しくしてくれたあの奥様も奴隷達のことを他の人達と同等には思っていなかったわ』『でもあの奥様は人格も素晴らしくとても立派な人だった』『私もあの奥様のような女性になれたらなあ・・』『もしそうなれば奴隷となっている人達を解放できるようになるかもしれない』『でも自分のところにいる人達ばかり解放しても、私がいなくなればまた元通りに戻ってしまうわ』『先ず皆の協力がないとできないし、それも望み薄すの状況だし』『やはり世界全体の人達の意識状態を変えないとどうにもならないわ』


 父が私を呼びに来た。
「あの奥様がおまえのことをいろいろと心配して下さってなあ」
 父は私に向ってこう言いながら、後ろに振り向いて指を差した。そこには泥まみれになって働かされていたあの彼がいた。父はこれから一体どうするつもりなんだとでも言いたげな表情をしながら立ち去った。私は言葉が出なかった。彼は静かに立ち上がった。お互いに距離をおきながら見詰め合った。私は彼のために何をしたらよいのか、何ができるのか全くわからなかった。私は力なく下を向いてゆっくりと自分の部屋に戻った。
 私は一人で静かにしていたかったので、部屋のべッドの上に横になったままじっとしていた。その日おそくなってから誰かが私の部屋に入ってきた。あの彼であった。彼の心の暖かさが直に伝わってきた。穏やかで崇高なエネルギーに優しく包まれているように感じられ、私は幸せそのものであった。
 私の考えていることが父にもまた周囲の誰にも理解されないであろうことは自分でもはっきりと分っていた。自分としてできることは彼に迷惑をかけないように努力していくことしか他にはないと思った。私は彼の仲間達のいるところに行ったときも、彼とはなるべく目を合わさないように気をつけた。私が目立つ行動をとることによってそれが彼を酷い目に合わせる原因となっては困るので、人前では彼を極力避けるようになった。私があまりにも周囲を気にしすぎるので、彼と会って話をする機会はほとんど無くなってしまった。


 私の御腹が日毎に大きくなってきた。父はこの私の姿を見て真青になってあちこち走り回ることとなった。私は数人の医者に見守られながら無事赤ちゃんを出産した。赤ちゃんの元気な泣き声が聞こえていた。しかし私はその後二度とこの子の声を聞くことができなかった。生まれてきた子の肌の色が私達とは違うのを見て、父はこの子を私の一生手の届かないところへ連れ去ってしまった。私がいくら泣きじゃくって必死に懇願しようとも、父はこの子の消息については一切何も教えてくれなかった。そのときの父の怒りは頂点に達していた。
「どこのどいつだ!」「わしの娘をこんな目に合わせおって!」「たたき殺してくれる!」
もう誰の言葉も父の耳には入らなかった。
 私の体調も整い部屋の外で父や妹達と立話をしていると、彼がこちらの方に走ってきた。そのとき何か嫌な予感がした。私が静止する隙もなく彼は私に抱きついた。あの優しく暖かい感覚が甦ってきて払は目をつぶった。すぐに父が彼を私から引き離した。目を開けると目の前の地面に彼の頭が転がっていた。私は声も出ず動くこともできなかった。


石庭 Art by T.Shimagawa
石庭  Art by T.Shimagawa

「な、なんてことするの・・」
力を振り絞ってやっと小さな声がでた。
「奴隷の分際で」「おまえをおそったのはこいつか?」
「この人がそんなことするはずがないわ!」
「おまえのお人よしにもあきれたもんだな‥」
「いいか、よく覚えておくんだぞ!」「あいつらはなあ‥」「優しくすれば優しくするほど、つけあがって調子に乗るだけだ」「あいつらは俺達が世話してやらんと生きていくことすらできない」「突放せばすぐ飢え死にだ」「食うためには他人のものを盗むしかない」「奪いあって共倒れするしかないんだ」「変な指導者のような者がでてきたりすると、わかりもしないくせにそれに盲従してとんでもないことをやらかす」「そういう悪い根は早いうちから切り取って始末しておいた方がいい」「そうしないとあいつら全員の命の保障ができなくなることにもなりかねんぞ」「あいつらを助けるためにもいつも厳しくしておかなきゃあならん」「わかったな!」
父の言葉には信念がこもってその態度には自信が満ちていた。父は絶対に不動であった。


 私は悲しくてたまらなかった。
『彼とはもう二度と話をすることができない』
『父のあの行為さえなければ、また彼とゆっくりと話し合うことができたかもしれないのに』『父があんなことさえしなければ、まだ彼は元気だったのに』『あんなことまですることはなかったのに』『もっと他の‥、人を傷付けなくてすむやり方がたくさんあったでしょうに‥』『悔しい』『本当に悔しい』『悔しいけれども父のことを恨みたくない』『‥ ‥ ‥』『恨んだところで元に戻るわけでは‥‥』『父のあの行為は父が信じているその信念から出たものだったわ‥』『私はその信念が正しいとは思っていないけれど‥』『わざと嫌がらせをしようと思ってやったわけではないけれど‥』『悪気は無いのよねえ‥』『でも悪気が無いといっても、殺された彼そして私から見ればその力強い信念も物凄く迷惑な話なのよね』『全く困ったもんだわ!』
『でも私にはその信念とやらに対抗できるだけの自信がないわ』『もしここで私がこの家から飛び出してしまったら‥?』『そういえば父のおかげで勉強もさせてもらったし楽な生活もさせてもらった‥』『私一人だけでいったい何ができるというの?』『彼の死はいったいどうなるの?』
『せめて父が気付いてくれるようになるまで頑張らないと彼に対して申し訳が立たないわ』『私が父の娘として生まれてきたのも何かの目的があっての巡り合わせなのかもしれない‥』

 

 自分の行動や考えを父や妹に理解してもらうためには、まず自分が家族の中に自然と解け込んで、こちらの方からすすんで家族の考えを理解しようと努力する必要があるのではないかと思った。先入観と固定観念からできた心の障壁を乗越えるためにはこれしか方法が無いものと確信した。私は、倫理的に許されると思われる範囲内に限定しながらも、父に積極的に協力をしていくことにした。毎日の生活の中で自分のできることで役に立つことを探し出し、それを現実に行動に移していった。

 

ほほえみ Art by Yuki Shougaki
ほほえみ Art by Yuki Shougaki


 何年かの後、私は父の仕事の一部を任されるようにまでなっていた。当時としてはめずらしくいろいろな知識をもった博学の女性であったので近所で何かと評判になった。商人達とも対等に交渉できる腕があり、彼等から尊敬の的ともなっていった。
 ある日、家にふてぶてしい態度をした王の家来がやって来た。
 「王のために盛大なる祭りが計画されておる」「ついてはそれに協力をしてもらう若者達を募っているのだが‥」「おまえのところにはそれに適う年頃の娘が二人もいるとのことではないか」
「確かにここに二人いますが、二人ともひどく不調法者でして‥、どちらも王様のお役に立てるとは思えません」「どうか他のところをあたってはいただけないでしょうか」
「何っ!」「嫌だと申すのか」
「と、とんでもございません」「何分にも娘達が未熟者ですので‥」「娘達が元で王様のお怒りを誘うようなことがあってはたいへん申し訳がない、御詫びのしようもないということであります」
 「何を言うのか」「祭りの時だけの短い期間である」「お前達のような身分で、王の前に出られる機会があるとでも思っているのか!」
 「私共のような身分の低い者達が王様のためのお祭りに出させていただくなどとはひじょうに恐れ多いことでして、とても私の娘達をほんの一時でもそのような高貴な祭典へお出しするわけにはいきません」
 「まだ言うのか!」「この俺に盾突こうというのか」「それは王に刃向かおうとするのと同じことになるのだぞ!」「おまえら一族は王に背く不忠者と思ってよいのだな!」
 「いえ」「そ、そんなことは断じてございません」「私共一族は皆、王様に対して忠誠を尽くしてまいりました」「これからもそれは決して変えるつもりはございません」
 「ならば、なぜ協力せぬ」
その家来は刀を抜いて高く振り上げた。父は額を地面に擦りつけたまま震えていた。私は前に進み出た。

Art by T.Shimagawa
Art by T.Shimagawa

「私がまいりましょう」
 「石頭の親父には似つかず、ものわかりのいい娘だな」
その家来はそう言いながら抜いた刀を鞘に納めた。
「王に失礼のないよう身支度をきちんとしておけよ」「追ってその予定の日を知らせる」「登城の日には迎えをよこす」「いいな」
「はい」「承知いたしました」

 その家来は気味の悪い目つきをするとすぐにこの家を出ていった。
「おい、おまえ‥」「そんなことを言っていいのか」「お前達のことが心配だからお断りをするつもりだったんだぞ」
 「でも‥」「あのとき、これしか方法が無かったではないの」「私、お父さんのことが心配で‥」「お父さんのためなら、どんな目に合ってもいい」
私はそのとき父の涙を初めて見た。
「王様という身分にある人である以上、つまらないことするわけがないわ」
もう家族の誰からも言葉が出なかった。


 登城の日、迎えが来た。父は何とも言えずに寂しい顔をしていた。私は駕籠に乗せられて城に向かった。案内された部屋には綺麗な衣装を身につけた娘達が集められていた。その日は食事も寝具も一切何も用意されていなかった。夕方になると皆腹が空いてきたが、何の指示も出されず何の連絡も無かった。夜は仕方なく全員着飾った衣装のまま床に横になって眠った。
 翌日部屋にあの家来が入って来た。全員に服を脱ぐように命令した。皆それを聞いて唖然としていると、次のように言った。
「これは王の命令だ!」「王の命令には絶対に服従だ!」「王の命令に従わんとおまえたちの親がいろいろと苦しむことになるぞ!」「それでもいいのか!」

  娘達は周りの様子を窺いながらおそるおそる衣服を脱ぎだした。それでも脱がない者には刀を抜いてそれで脅かし始めた。泣きじゃくって座り込み動かない者がいると、部下に命令してその衣服を剥ぎ取らせた。全員を裸にさせると外に連れ出した。
 今まで見たこともない巨大な石で造られた構築物に圧倒された。自分達が連れてこられたところは地面からかなりの高さがあり、ある程度の幅のある道があってそれが二本遠くの方まで一直線に続いていた。これは無限に続く長い地上の橋のようであった。もちろんこれも石のようなものでできていて、この道の横には大きな白い建物が建っていた。この建物は窓がどこにあるのかよくわからないようになっていて、実に不思議な構造をしていた。
 背後から武装をした兵隊がやってきた。その兵隊達は全員綺麗な制服を着ていた。突然彼等は刀を抜き威嚇を始めた。並べられていた娘達は叫び声を上げその場から逃げ出した。兵隊達は刀を振りながら逃げる彼女達の後を追い回した。私はそれを見てかなり腹が立ち兵隊達を睨みつけた。やや年配と思われる紳士が私に近付いてきた。
「ほら」「逃げないと切るぞ!」
「抵抗もできない者に刀を振り回して追いかけるとは‥」「それでも人間か!」「人間の顔をした悪魔か!」「私はそんなことには屈しない!」「刀でこの身体が切られようとも絶対に逃げない!」
「本当に切るぞ!」

 

  私は道路のようなものの端に立っていたのでもうこれ以上後に下がることができなかった。その男が急に接近してきたので私は無意識的に一瞬のうちに横に移動した。その人はそのはずみでそこから下に落ちた。下は覗きこんでみるとこの道のような建造物はかなりの高さがあった。落ちたら絶対に助からない高さであった。私はぞっとして後ずさりをすると、今度は若く美しい青年がこちらの方に走って来た。

「よくも殺したな!」「あんなに立派な方だっのに」「絶対に許せない!」「あの方の仇を討つ!」
私には何も言う隙を与えずに思い切り力を込めて切りかかってきた。そのとき遠くの方へ逃げていく娘達と彼女達を追いかけている兵隊達の姿が見えたような気がした。

 私は刀で切られたものと思っていた、しかし私はいつものとおり普通に呼吸をしていて身体には外傷もなく健康体そのものであった。だが今現在自分がどこにいるのか、いつの間にここに移動させられてきてしまったのか全く見当のつけようもなかった。不思議なことにあそこで落ちて死んだとばかり思っていたあの男性が隣にいた。
「何てことだ、妻と子がいるというのに」
「ああ良かった」「落ちて死んだものとばかり思っていましたが、助かったんですね」
「とんでもない、私達はあのときに死んだのさ」「戻りたいと思っても、もう元には戻ることはできないんだ」
「えっ・・」
私は言葉につまった。


「あんたのお陰で俺の妻と子供達が残された」
「私にだって父と妹がいるわよ」「それに好きであんなところに行ったわけじゃないのに」
「俺だって好きであんなことをやってるわけじゃあない」「妻と子が人質に取られているのも同然なんだ」
「じゃあ、あなた」「あなたの家族だけが助かりさえすれば他の人のことはどうなっても平気なの!」
「あんたがあのとき逃げてさえいてくれれば、あんなことにはならずにすんだのに」「俺が死んでしまうと、俺の家族がどんな目に合わされることになるのかわかりゃあしない」「とても心配だ」
「何の力も無い娘達をあんな酷い目に合わせておいて、よく言うわね」「私だって死にたくはなかったけれど‥、あんな酷いことだけは絶対に許せなかったわ」「でも、あなたがあそこから落ちてしまうなんて、思いもよらなかったわ」「それだけは私も残念に思っているわ」「あのとき私があそこであなたに素直に殺されていれば良かったわよね」「そうすればあなたも‥」
「俺だって人殺しなんか好きじゃない」
「‥ ‥ ‥」
「あんたを責めたって元に戻れるわけじゃあないし‥」「あんだだって無理矢理あそこに連れてこられたんだろうしな」
「父は自分の身を犠牲にする危険性を侵してまで、私達を助けるために、あの家来に懇願していたし‥」「私は、その父があの家来に危害を加えられ殺される恐れがあるのを黙ってみていられなくて、あの城へ行くことを承知してしまったんだわ‥」「だから、あなたがご自分の家族のことを第一に心配する気持ちはよくわかるような気がするわ」
「‥ ‥ ‥」
「どうせ死ぬなら、変な正義感にとらわれずにそのまま逃げようとして、他の誰かに私が殺されていれば良かったんだわ」「そうしていれば、あなたを巻き込むこともなかったのにね」「あなたの家族も悲しまずにすんだわ」
「何もそんなふうに自分を追い込まなくても‥」
『そうよ、私があのとき先に殺されていれば、今頃この人は‥』
私はこの思いが心に焼きついてしまった。
 光に包まれた方達がやってきた。

般若心經 Art by T.Shimagawa
般若心經 Art by T.Shimagawa


「僕は行きます」「過ぎたことを気にするより未来に希望を持って、今をそして自分を大切にしていきましょう」
 彼はそう言って案内の方達についていった。
 辺りが少し薄暗くなったような気がした。私は先程の思いが頭から離れなかった。それから死んでいるというのに生きているときと丸っ切り同じ形の体があることと、生きているときと比較して全く感覚に変化がみられないことが不思議であった。


 私は自分が生きて活躍していたときの肉体が今どこにどのようになっているのかを知りたくなった。側にいる方にお願いすると直に見せてくれた。城の中の薄暗いところに首の無い死体が置かれていた。それが私が今までいた世界に残してきた自分の肉体だと説明された。私はそれがどのように処理されるのか気になってはいたが、それもそのうち、見る気も失せてきた。
 私は父と妹のことが気になった。父は目から涙をたくさん流しながら妹に話しかけていた。


「姉さんはなあ」「自分の身を犠牲にして私達を助けてくれたんだ」「城の連中が何を言おうが姉さんは立派な人物だ」「俺も昔はあいつによく小言を言ったもんだが、考えもしっかりとしていてよくできたやつだった」「人との接し方についてもいろいろと教えられることがあった」「姉さんのことを誰に何と噂されようとも、素晴らしい姉さんを持てたことを誇りに思うんだぞ」「いいな」妹は父の言葉を聞いて泣きながら頷いていた。どうやら私が死んだことだけは正確に伝わっているらしかった。
 私はまたあの思いに没頭し始めた。
『あのとき、もし私が先に殺されていれば、あの人もあの人の家族も今頃幸せに暮らしていたかもしれないのに‥』『私があの正義感に夢中になりさえしなければ私一人の犠牲だけですんだかもしれないのに‥』


管理人の所感

 久しぶりのUPになってしまいました。
 今後は管理人の所感がなくとも、月に一つは必ずUPしていきたいと思います。
(遅れているのは私が愚図愚図していてなかなか所感を書かないから)

 数名からお叱りを受けています。<(_ _)>


 今日は短いですが、「勇気」について考えてみます。

 私たちの成長の過程というのは、先ず善悪を知ることから始まります(モーゼの十戒です)。
 次に可哀想と感じる心を学びます(ブッダの慈悲です)。

 次に行動できる愛を学びます(イエスの自己犠牲の愛です)。

 

 天は理由あってこの順番に聖者を地上に降ろしました。

 地上では別々の宗教になってしまいましたが、もともと一つの協力体系で一つの意思で動いているのです。

 

 人類の意識の進化はこのように為されてきましたが、赤ん坊から成人になるまでの一人ひとりの意識の変化も同じような成長の過程をたどります。

 その辺のことはここに詳しく書いてありますので、興味ある方はお読みください。

 

 勇気というのは慈悲(可哀想と思っている)だけではなくて、そこから行動に移す意志(indent to do)が発露するときに必要になります。イエスの自己犠牲と大いに関係があります。

 城に行って裸にされて追いかけられた志摩川さんが、

「抵抗もできない者に刀を振り回して追いかけるとは‥」「それでも人間か!」「人間の顔をした悪魔か!」「私はそんなことには屈しない!」「刀でこの身体が切られようとも絶対に逃げない!」
 
と刃向ったところなどはまさにその瞬間と言えるかも… 知れません。

 

「知れません」と書いたのは、その時に志摩川さんがどれほどの恐怖心を持っていたかによるのです。

 恐怖心を持っていてそれを振り絞って抵抗したのなら、それは勇気なのですが、恐怖心をほとんど感じなかったとしたら、そこに勇気は必要はなかったのということなです。

「在るが侭」だからです。

 

 それこそが神と一体になった「信仰心」です。

 

 しかし私たちは勇気という試練を乗り越して「在るが侭」にたどり着くことはできません。

 よく社会悪などの波動に意識を向けずに良い波動を保つことが必要だという考え方に当たりますが、それは勇気を卒業していない人にはあてはまらでしょう。

 地球人のほとんどは勇気から卒業できる段階にはいないのです。

 

 それどころか、私たちは善悪の呪縛からすら自由になれていません。

 常に自分の好き嫌いから物事を判断します。そしてそこに感情が生まれ、私たちの心は際限なく揺れ動くのです。勇気を阻む恐怖心も、自分はこうありたいという理想から遠ざかることを感じて生じています。恐怖心は執着心から生じます。自分のこうありたいと願う観念を追い求める執着心です。何も変わらずこのままであって欲しいという変化を拒む心も執着心です。

 神の想いを阻む心です。


 言葉であれ何であれ、私たちの感情が動くのは、私たちの固定観念と違った現象が私たちの前に現われるからです。

 そして思い込んでいる固定観念が呼び水となって、私たちの心から固定観念が消えるまで、これでもかこれでもかと、自分がこうあるべきだと決めている現象とか、自分が嫌っているタイプの人間とかが、その好き嫌いがなくなるまで現われ続けるのです。

 こうゆう人は良い人で、こうゆう人は悪い人というのも固定観念であり、感情記憶です。

 

 このように私たちは何百回、何千回と転生輪廻を繰り返してきたのです。

 

 勇気がなくても前に進むためには、先ずこのこだわりという条件付けの払拭が必要のようです。